この記事では、実際に介護保険制度の運用や、予算等の積算をしてきた経験から、介護保険制度の保険料などの増加推移を示し、我々は勿論、子ども世代にも負担が増えてきてしまうことを書きたいと思います。危機感を示すことで、健康寿命延伸の必要性を訴えることが目的です。
介護保険制度とは
介護が必要になった人に対し、費用や介護サービスを提供する制度です。
かつては、子どもや家族が行うものとされていた親の介護ですが、高齢化が進むにつれ、介護を必要とする高齢者の増加や核家族化の進行、介護による離職が社会問題となりました。こうした中、家族の負担を軽減し、介護を社会全体で支えることを目的に、2000 年に創設されたものが介護保険制度です。
介護保険料の推移
65歳以上の方が払う介護保険料は制度開始時より約2倍になっています。(全国平均)
年 度 |
H12~14 | H15~17 | H18~20 | H21~23 | H24~26 | H27~29 |
H30~R2 |
保険料 (円) |
2.911 |
3,293 | 4,090 | 4,160 | 4,972 | 5,514 |
5,869 |
※3年ごとに見直し
介護保険の総費用(当初予算)
介護保険制度に関わる総費用も制度開始時より約3倍になっています。
年 度 |
H12 | H15 | H18 | H21 | H24 | H27 |
H30 |
当初予算額 (兆円) |
3.6 |
5.7 | 6.4 | 7.4 | 8.8 | 9.8 | 11.1 |
増加の要因
介護保険料や総費用が増加しているのがご理解いただけたと思いますが、増加の原因を考察していきます。
制度対象者の増加
介護保険制度は原則65歳以上の方が利用が可能であり、65歳以上の方を第1号被保険者といいます。
※40歳から64歳を第2号被保険者といい、加齢に伴う疾病が原因で要介護(要支援)認定を受けたときに介護サービスを受けることができます。
65歳以上の被保険者の増加
区 分 |
2000年4月末 | 2018年4月末 | 増加数 |
割合 |
第1号被保険者数 |
2,165万人 |
3,492万人 | 1,327万人 |
1.6倍 |
要介護(要支援)認定者の増加
言葉の意味を簡単に整理します
・要介護…自分一人で日常生活を送ることが難しく誰かの介護が必要な状態であり、この状態と判断されると「要介護認定者」となります。
・要支援…日常生活は自分で行えるが多少の支援が必要な状態であり、この状態と判断されると「要支援認定者」となります
要介護(要支援)認定者の増加
区 分 |
2000年4月末 | 2018年4月末 | 増加数 |
割合 |
認定者数 |
218万人 |
644万人 | 426万人 |
3.0倍 |
サービス利用者の増加
要介護(要支援)認定をされると、ヘルパーさんが自宅にきて掃除を行う等の在宅サービスや特養等へ入所する等の施設サービスを受けることができます。※要介護認定状況により利用できるサービスが異なります。
区 分 |
2000年4月末 | 2018年4月末 | 増加数 |
割合 |
在宅サービス利用者数 |
97万人 |
366万人 | 269万人 |
3,8倍 |
施設サービス利用者数 |
52万人 |
93万人 | 41万人 |
1.8倍 |
地域密着型サービス利用者数 |
– |
84万人 | 84万人 |
– |
合 計 |
201万人 |
543万人 | 474万人※ |
3.2倍 |
※ 居宅介護支援、介護予防支援、小規模多機能型サービス、複合型サービスを足し合わせたもの、並びに、介護保険施設、 地域密着型介護老人福祉施設、特定入所者生活介護(地域密着型含む)、及び認知症対応型共同生活介護の合計。
まとめ
簡単にまとめてみましたが、介護保険制度が始まって約20年がたち、費用負担が増えてきたことがわかっていただけたと思います。今後団塊の世代が後期高齢者になることで、さらに介護保険サービスの利用が増え、保険料が増えることが見込まれます。高齢者本人の負担は勿論、40歳~64歳の現役世代の負担も増えます。
国民全員が健康で自立して、要介護状態にならないことが必要です。そのためには今から運動・筋トレ習慣を取り入れ、健康でいる努力をしなければなりません。
マイナス面ばかりにフォーカスを当てた記事になってしまいましたが、この危機感を共有して、まずはご自身は勿論、親御さんや大切な人が健康でいられるよう運動習慣をとりいれる努力をしていただければ幸いです。
参考 厚生労働省 介護保険制度をめぐる状況について H31.2.25
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