この記事では、脂肪を減らし、筋肉量を増やす身体組成を改善することによって病気の脂肪率を減らすことについて、研究結果をもとに解説をしたいと思います。
ダイエットをすると、カッコいい身体になり身体的な魅力が増すだけでなく、心血管疾患などの病気のリスクが減り、睡眠の質が良くなり、健康度も増すことも報告されています。
しかし、近年の健康科学では体重を減らすことよりも、脂肪量と筋肉量の比率である身体組成を改善させることの重要性を唱えています。
これまでは、我々サラリーマンも毎年受けている健康診断でも指標と一つの指標になっているBMI(※BMIは身体組成を考慮していない)によって健康度がはかられていますが、近年では身体組成が新たな指標になりつつあります。考えてみれば、筋肉が多くて体重が多い人と体脂肪が多くて体重が多い人では健康度も違うのではないかと、なんとなくみなさんも想像がつくと思います。
この記事では、脂肪を減らし、筋肉量を増やす身体組成を改善することによって病気の脂肪率を減らすことについて、研究結果をもとに解説をしたいと思います。
では、この記事の要旨です。
・病気による死亡率を筋肉は減少させる
・脂肪を減らし、筋肉を増やすことが最も死亡率を減少させる
では、順に解説をしていきます。
BMIとは?
今でも健康診断等で使用されているBMIについて解説します。
BMI(body mass index):「体重(kg)÷身長(m)の2乗」で算出される値であり、肥満や低体重(やせ)の判定に用います。
肥満度を表す指標として国際的に用いられており、計算方法は世界共通ですが、肥満の判定基準は国によって異なります。
日本では、以下のとおり基準を設けています。
基 準 |
判 定 |
18.5未満 |
低体重(やせ) |
18.5以上25未満 |
普通体重 |
25以上30未満 |
肥満(1度) |
30以上35未満 |
肥満(2度) |
35以上40未満 |
肥満(3度) |
40以上 |
肥満(4度) |
BMIが22になるときの体重が標準体重であり、最も病気になりにくい状態であるとされています。25を超えると脂質異常症や糖尿病、高血圧などの生活習慣病のリスクが2倍以上となり、30を超えると高度な肥満としてより積極的な減量治療を要するものとされています。
【例】
身長170cm、体重80kgの方の場合
80(kg)÷1.7(m)÷1.7(m)=27.7
→肥満(1度)
BMIは、体重と身長で判定されるため、脂肪量と筋肉量の比率の身体組成を考慮していません。そのため、同じBMIでも脂肪量が多く、筋肉量が少ない肥満の人もいれば、トレーニーのように脂肪量が少なく、筋肉量が多い人もいます。
病気による死亡率を筋肉は減少させる
身体組成とは、主に「脂肪量」と「脂肪を除いた徐脂肪量」の比率のことをいい、徐脂肪量には、筋肉や骨、臓器血液などが含まれますが、骨や臓器、血液の量は変化しにくいため、徐脂肪量は主に筋肉量として扱われます。
いいかえれば、身体組成は脂肪量と筋肉量の比率であり、身体組成の改善は、筋肉量が増えることを意味します。
身体組成=脂肪量:徐脂肪量(≒筋肉量)
身体組成の改善=脂肪量の減少+筋肉量の増加
そして、BMIだけでは計れない身体組成が病気による死亡リスクに大きく影響を与えることが報告されており、特に筋肉量が多いことは死亡率を減少させる要因としてされはじめています。以下が報告です。
【死亡率の報告】
区 分 |
報告内容 |
備 考(報告者等) |
慢性腎不全 | ・体脂肪率が高くなると、死亡率も高くなる
※この体脂肪率の増加は徐脂肪率(≒筋肉量)の減少を表している。 |
Lin、2017 |
心臓病 | やせ型の肥満(脂肪量が多く、筋肉量が少ない)において、死亡率が高くなる | Candramouli,2019 |
大腸がん | ・脂肪量が多いほう死亡率が減少する肥満のパラドックス※が認められているが、筋肉量も多いとさらに死亡率が減少する | Charette,2019 |
重症な肺炎や心臓病 | 大腰筋・大胸筋の筋面積が大きいほど死亡率が減少する
→筋肉量が多いほど、重症の病気の死亡率が減少しやすい |
Kou HW,2019
Jaitovich A,2019 |
新型コロナウイルス | 中等症から重症者の入院期間は筋肉量が多いほど短くなる | Gil,2021 |
死亡率 | ・脂肪量が多いほど死亡率が増加し、脂肪量が低いほど死亡率が低下する
・筋肉量が少ないほど死亡率が増加し、筋肉量が多いほど死亡率が低下する |
Sedlmeier,2021 |
※肥満のパラドックス:BMIが高いほど予後(病気等の将来的な状態、見込み)がよいという現象
筋肉量が多いと病気による死亡率が減少する理由
なぜ筋肉量が多いと病気による死亡率が減少するのでしょうか?
結論からいうと、筋肉にはエネルギーが貯蔵できるため、筋肉量が多いほど、病気や手術の時にエネルギー不足を補うために有利になるためとされています。
糖質・炭水化物に含まれるグルコースは効率的にエネルギーに変換できます。エネルギーに使用されなかった余ったグルコースはグリコーゲンに形を変えて、その8割が筋肉内に貯蔵され、その他は肝臓などに貯蔵されます。
また、筋肉のもとになる筋たんぱく質は必須アミノ酸を材料にして合成されます。筋たんぱく質が多く合成されると筋肉量が増えます。また、筋肉は筋たんぱく質を分解することによって体内にアミノ酸を放出することもできます。
病気になったり、手術をするときにはエネルギー不足になり、治癒させるために多くのエネルギーが必要となります。その際に要となるのが、エネルギー源となるグルコースやアミノ酸を貯蔵している筋肉です。
エネルギー不足になると、筋肉内に貯蔵していたグリコーゲンを分解してグルコースが体内に供給されます。さらにエネルギーが必要な場合には筋たんぱく質を分解し、アミノ酸を体内に放出します。このアミノ酸を使って肝臓でグルコースが作られます。作られたグルコースは必要になる器官に運ばれて治癒の促進に使用されます。
そのため、筋肉量が多いほど貯蔵されるグリコーゲンやアミノ酸の量も多くなるため、エネルギー不足の際に有利になるのです。
まとめ
ダイエットによって脂肪を減らすことは、健康度を高めるために必要ですが、筋肉が減ってしまっては健康にとって不利になります。
健康のためになるべく筋肉を減らさないよう食事制限だけのダイエットはやめましょう。
筋肉をつけて健康になりましょう。
みなさんの参考になれば幸いです。
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